自筆証書遺言の書き方とは?書く前の準備や注意点を解説!

「自筆証書遺言の書き方が分からない」

そんなお悩みをお持ちではありませんか?

自筆証書遺言は、書くまでしっかりと準備することと記入するルールを守ることがポイントです。

この記事では書くまでの流れや保管方法、注意点を解説します。

自筆証書遺言の書き方を理解して、自分の相続でトラブルになることを防ぎましょう。

自筆証書遺言を書くまでの3つの準備

自筆証書遺言を書くまでには、3つの準備が必要です。

  1. 相続人を調べる
  2. 自分の財産を調べる
  3. 誰に何を相続するか考える

準備する順番に沿って解説します。

1.相続人を調べる

まずは自分の戸籍謄本をたどり、法定相続人を調べます。法定相続人とは、民法で定められている相続人のことです。基本的には、配偶者と子ども、親、兄弟が法定相続人となります。

2.自分の財産を調べる

まず自分がどのような財産を持っているのか不動産や銀行口座、証券口座を確認します。財産ごとの調べ方は、以下の通りです。

財産の種類必要な書類調べる内容
不動産固定資産税納税通知書所在地(地番)、面積
預貯金通帳またはキャッシュカード銀行名、支店名、預金の種類、口座番号
有価証券取引報告書取引会社、銘柄、株数
保険保険証券保険会社、証券番号、保険金額、受取人

不動産を調べるときに必要な固定資産税の納税通知書は、毎年春ごろ、不動産がある役所から届きます。納税通知書がない場合は、役所で発行できる名寄帳や、法務局で発行できる不動産登記簿謄本を取り寄せましょう。

有価証券の取引会社が分からない場合は、証券保管振替機構に開示請求しましょう。どこの取引会社に証券があるか、確認できます。

3.誰に何を相続するか考える

遺言書では、相続人と受け取る割合を自由に決められます。ただし、法定相続分が決められているため、誰に相続させるか考える前に確認しましょう。法定相続分とは、それぞれの相続人の遺産の取り分を、法律で決めた割合を指します。1人の相続人だけに偏った割合を相続させると、相続人で揉める可能性があるためです。相続人が最低限の遺産を受け取る権利である「遺留分」を主張して、遺産相続がまとまらないことも。

自筆証書遺言を作成する3ステップ

自筆証書遺言を作成するには、3ステップあります。

  1. 日付を記入する
  2. 署名・捺印をする
  3. 相続財産・分ける割合を正確に記入する

実際に記入する順番に沿って解説します。

1.日付を記入する

日付を正確に記入しないと無効になることも。「吉日」の記載や日付のスタンプは無効となるため、必ず直筆で遺言書を書いた日付を記載しましょう。和暦と西暦どちらで記入しても、問題はありません。

2.署名・捺印をする

戸籍通りのフルネームで署名をしましょう。署名がない場合は、遺言書は無効と判断されます。正確に遺言者を特定するために、署名の前に住所を記入することをおすすめします。捺印は、認印でも問題ありません。

3.相続財産を正確に記入する

相続財産を正確に記入することがポイントです。特にマンションを所有している場合は、持分や敷地権の種類など細かく書く必要があります。書きにくい場合は、財産目録の代わりに不動産の登記簿謄本を添付しましょう。ただし登記簿謄本に、署名と捺印が必要になるため注意が必要です。

財産の割合は「2分の1」のように記入します。すべての財産を1人に相続させる場合は、「遺言者〇〇〇〇は、相続人〇〇〇〇に全ての財産を相続させる」と書きましょう。

自筆証書遺言の文例

自筆証書遺言の文例を紹介します。この文例では、法務局の様式にしたがって、財産を物件等目録として作成しています。

自筆証書遺言の2つの保管方法

自筆証書遺言の保管先は、自宅か法務局です。遺言を自宅で保管すると、手数料がかかりません。法務局に保管してもらうと、開封する前の家庭裁判所で行う検認の手続きが不要となります。それぞれの保管方法のメリットとデメリットを解説します。

自宅で保管する

自筆証書遺言は、自宅で保管できます。遺言書は封筒に入れて封印をしましょう。封筒の裏に「開封する前に家庭裁判所で検認すること」などを書いておけば、改ざんを防げます。紛失を防ぐためには、法務局の保管制度の利用をおすすめします。

法務局で保管してもらう

2020年7月から、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まりました。自筆証書遺言は、開封する前に家庭裁判所で検認の手続きが必要です。法務局で保管された遺言は検認不要で、3,900円で保管を依頼できます。ただし、法務局で保管されるには、用紙のサイズや余白などのルールを守らなければいけません。ページ番号や片面のみの記入などの詳しいルールは、下記の法務局HPでご確認ください。

参照:法務局 遺言書の様式等についての注意事項

自筆証書遺言を書くときの4つの注意点

自筆証書遺言を書く時には、4つの注意点があります。

  • 自筆で記入する
  • 訂正のルールを守る
  • 共同で作った遺言は無効となる
  • 明確な表現で記入する

遺言書の効力に、影響を与えやすい順番で解説します。

自筆で記入する

ワープロで記入した自筆証書遺言は無効のため、必ず自筆で記入しましょう。2020年の法改正により、財産目録のみワープロや代筆が可能となりました。改ざんを防止するため油性のボールペンや万年筆で記入し、長期間の保管に耐えられるようなしっかりとした紙に記入しましょう。

訂正のルールを守る

書き間違えてしまった場合は、ルールに従って訂正しましょう。訂正ルールにしたがって訂正しないと、遺言書が無効と判断される可能性があるためです。間違えた箇所に二重線を引いた上に訂正印を押し、近くに書き加えると訂正できます。ただし、訂正する箇所が多い場合は読みにくくなるため、書き直すことをおすすめします。

共同で作った遺言は無効となる

夫婦共同で作った遺言は、無効となるため注意しましょう。民法975条で、2人以上で同じ遺言を作れないと定められているためです。夫婦で遺言を作りたい場合は、それぞれ1通ずつ作成しましょう。

明確な表現で記入する

「相続させる」「遺贈する」などの明確な表現を使いましょう。「任せる」「託す」などの表現では、管理を頼むのみで所有は別の人にするなどの解釈ができるためです。土地や銀行口座などの1つの財産を相続させたい場合は、金額や割合を具体的に記入することをおすすめします。

まとめ

自筆証書遺言は、書くまでに相続人や財産を調べる必要があります。無効と判断されないために、書き方のルールを守って書きましょう。自宅で保管することもできますが、紛失や改ざんのリスクがあるため、法務局での保管をおすすめします。訂正のルールを守り、明確な表現で遺言を記入して、遺産のトラブルを防ぎましょう。